チベット縦断記 シガツェからエベレストベースキャンプへ(前篇)



チベットは今日も晴れ。
乾季を目前に控えたこの時期はチベットらしい青空が楽しめるいい季節だ。
雨も降らなくて気温が下がり始める頃だから寒すぎないし、気候はベスト。
観光客も減るし、10月末のチベットはおすすめ。
ただ、日差しと乾燥がすごいから、ボディクリームとリップクリームは必須。



今日はついにEVC(エベレストベースキャンプ)を目指す。
ここ、チベット第二の都市・シガツェから340kmの大移動だ。
エベレストの麓まであと少しというところまできて、正直いろいろびびっている。



昨日間に合わなかったパーミットの取得・申請は、レンチン(チベット人ガイド)が朝から25組待ち(!)の中行ってくれたおかげで無事取得できた。
ちなみにシガツェではタルシンボ寺もシャルゴンパも行くことができなかった。
なんとなく、死ぬまでにまたいつか戻ってくることができるような気がしている。(っていうか絶対チベットにはまた戻ってくる!)



外国人の私たちがチベットを旅するにはいろいろな制限の元での移動になる。
一番重要なことは、チベット域内で外国人は個人での旅行が禁止されているということ。
私たちの場合、ラサに到着してからネパールに入国するまでチベット人ガイドと行動を共にすることが義務づけられている。
そして、入境許可証を申請した時に提出した旅程通りに行動しなくてはいけない。
中国公安による検問ポイントがいくつもあって、早すぎることも遅すぎることも許されない。
かなり神経質な旅だったりする。
それをコーディネートしてくれる(プラス、外国人が勝手に身動き取らないようにする監視役)チベット人ガイド1名、それに私たちを目的地まで連れていってくれるチベット人ドライバー1名が、ラサからチベット・ネパール国境まで私たちと行動を共にする。
この旅の間、1日のほとんどは車で過ごすから、彼らとの関係は結構大事だったりする。



ガイドはチベット人のレンチン。
私たちはチベット名で呼んでいたけどアレックスと英語名も持っている。
バリバリのイングリッシュ・スピーカーで検問や手続きなんかをスムーズにこなしてくれた頼れる存在。
決して愛想がいいわけではないし、時間にもめちゃくちゃ厳しいけど、ヘラヘラしたやつなんかより100倍いい。

ドライバーは・・・名前忘れてしまった。
最初は寡黙な人とばかり思っていたんだけど、一回話したらすっごく良い人で。
彼の日本語がめちゃくちゃおもろいのなんの。
「コンニチハ!!!!!ハイ!!!!!バカヤロ!!!!!」
っていきなり言ってくるもんだから、大笑いした。
7日間長距離を走ってくれたヒュンダイのバンは、彼の自前。
清潔かつ、6人乗れる後部座席に4人で座っていたからかなり快適に過ごさせてもらった。
ランクルだったらここまで快適ではなかったんじゃないかな。

そんなチベット人2人と私たち日本人4名の合計6人でチベットを縦断した。






今日も道中に公安のチェックポイントがいくつかあるようで、相変わらず速度制限がネックだ。
(チェックポイントでは到着時間も見られているようで、早く着き過ぎると「速度守ってないだろ!」と面倒な事態になりかねない・・・)
到着時刻まで時間がたっぷりあったこともあって、途中、小さな村に寄ることになった。



村に着いて車を降りるとすぐ、村のおばあさんが手作りのパンをくれた。
ふわふわでもないし(むしろ固めで詰まってる感じ)で甘さも塩っぽさもない無味。
(結果、みんな一口だけ食べて首かしげて残りは全部私に回ってきた。)

お世辞にも、金銭面的に裕福には見えない小さな村。
そこへいきなりやってきた、よくわからない外国人旅行客に食事を分けてくれた彼女の行動に心打たれたことを私は一生忘れない。
今思うと、バックパックを背負った私は、ぼったくりや客引きのカモにされることが当たり前で、まずは疑ってかかることが当たり前だった日常が続いたこの何か月にも渡る旅の中で、一切そういったことを経験しなかった唯一の国がチベットだった。
国全体で暗い過去を持ち、未だその傷を抱えて生きている、「虫一匹殺さない」チベット人の優しさは本物だ。
大自然も独特の文化ももちろんそうだけど、私がチベットに惹かれる理由の一つは間違いなくチベットの人たち。

映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」でもチベット人が命あるものは虫だろうと何だろうと絶対に殺さないと描かれているシーンを観ることができる。
すごくいい映画なので見たことない人はぜひ。

チベットのどこだかわからない小さな村で、太陽の光を浴びながら、自家製パンとドライバーが買ってくれたゆで卵にかぶりつく。
塩味がきいていて想像以上にすごく美味しかった。
卵はできるだけ避けてきたけど、ゆで卵はたぶん大丈夫。
ちなみに今のところ、チベットでお腹は一度も壊していない。


村の子。

村を後にして、更に車を走らせる。
今日は、チベット縦断の旅のメイン「エベレストベースキャンプ」にたどり着かないといけない。
道中でこんな標識が見えたものだからもう着いたのかと気が緩みそうになったけど、ここからEVCまではまだかなりの距離を移動することになる。




これでもかと近い空と山とタルチョ。




力強く風になびくすごい数のタルチョは圧巻。


草原と雪山と青い空がどこまでも続く。


「電線が嫌いだ」とレンチンが言った言葉が忘れられない。




いよいよベースキャンプに向かうかと思いきや、ベースキャンプがあるエリアに入るためのチケットを購入しなくてはいけないということだった。
本当、チベットはどこに行ってもお金を払わないと入場できない。

チケットを購入するのに向かったのは、大自然の中にポツンとある民家のような場所。
残念ながら写真がないのだけれど、ドアをくぐると狭い部屋に若いお母さんと赤ん坊がいて、お母さんからチケットと言う名の年季が入ったハガキを買う。(値段は忘れてしまった・・・)

※ちなみにここで行ったトイレはかなりすごかった。
高床式のドア付き個室なんだけど、木製の床に穴が開いてるだけ。
しかも穴から真下にヤクがいるのが見える。
床が抜けてヤクがいる肥溜めに落ちるかもなんて考えだしたら気が気じゃなかった。



チケット購入後、公安のチェックポイントでチケット裏にスタンプを押され、ついにベースキャンプエリア内に入域できた。


全く日付と合っていない、意味不明な日付。

エベレスはもうすぐそこだ。

(2020年6月改訂)

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